最近、TPPと農業保護の在り方についての議論がメディアに載らない日はないといってもよい。特に「農業は競争力がない、構造改革が必要である。農業の保護に引っ張られてTPPが推進できないのはおかしい」という論調である。
著名人までが短絡的な論調を載せているのをみて残念に思う。
TPPの推進是非については、いろいろな書物が出版もされているので、ここではその議論はしないが、農業の現状の捉え方については、以下の3点は理解したうえで、議論してほしいものだと思う。
(1) 農業といっても、いろいろな業種があるので、まとめて捉えるのは危険。
一口に農業といっても、米作、野菜作、畜産、果樹、花卉、・・・といろいろな業種がある。野菜作といっても露地野菜とハウスとではビジネスモデルが全く異なる。
製造業でも、自動車、家電、ハイテク、ロボット、繊維、化学、・・・があるのと同じ。
全部をとらえて競争力があるとかないとか、海外に出て行っても戦えるとかの議論は、乱暴である。自動車と繊維業を同列に捉えて国際競争力うんうんを議論する人がいるだろうか?
(2)自由化によって国内農業が激変したあとの国土を想像しているだろうか。
農業が激変したときの影響は、大型ショッピングセンターの進出で駅前商店街が壊滅するくらいの影響では済まないだろう。生き残るのは、北海道と東北の平野部、畜産、都市近郊の園芸的農業(野菜、果実など)だけとも言われている。 中山間地が森林と荒地に戻り、本州以南の田舎からは田んぼがなくなりビニールハウスと畜舎が立ち並ぶ風景になると思われる。
(3)直接保障とTPPは、セットの施策である
直接保障制度がばらまきと表現され、TPP推進とともにやめるべきという論調も多いが、TPPは関税撤廃でありそれを補うために生まれたのが直接保障の考え方である。EUを含め、各国はこの方向性を取っており、民主党の政策もまさにそれに倣っている。
各国とも自由貿易を推進しても農業に対する補助金を減らしているわけではなく、むしろ直接保障で力をつけて農産物の輸出を強化している国も多い。
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