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2014年8月13日水曜日

韓国の朴大統領の反日政策に対する地政学的考察

昨今、日本国内では、朴政権の親中反日政策に対する批判が大きい。
しかしその理由の分析となると、「父が親日だったからそれを否定するためだ」とか「日本バッシングを行って韓国企業を優位にするため」とか「感情的だから」とか「もともと中国の冊封体制に慣れた国だから」とかの説明が上がっている。

しかし、仮にもエレクトロニクスや自動車といった先進的な製品を世界に大量に販売している先進経済国が取るには、納得感がない説明が多い。

冷静に考えてみると、韓国が親中路線を取るからと言って反日である必要性はなく、両方と仲良く付き合った方がメリットがあるに決まっている。
特に数年前まで韓流ブームで観光や音楽、ドラマなどが日本で広く受け入れられていたし、サムソンなどの大手メーカーも日本企業から基幹部品の調達を受けている。
極端な反日(特に一銭の特にもならない慰安婦問題)に固執するのは、妙である。

そこまでして、朴政権が反日にこだわるのは、かなり強い意志と戦略があると見た方が良い。

鍵は南北統一
その戦略とは、南北朝鮮の統一であろう。
私は政治家でも外交官でも国際的ビジネスマンでも軍事関係者でもないので、ただの憶測だが、
そう考えると妙に辻褄が合う。

韓国主導の南北朝鮮の統一に必要な要件は何か?言うまでもなく中国の支持(最低でも見過ごしてくれること)である。
しかし、対米の緩衝地帯である北朝鮮を失うことは中国が看過するはずがない。
そこで、韓国自らが「中国寄りの」緩衝地帯に名乗りを上げることで、北朝鮮の代わりになることを中国に納得させ、北朝鮮の後継者として見てもらおうということだろう。

本来であれば米軍を追い出して反米路線を掲げるのがよい。
しかしそれは中国に組み込まれ独立を失うリスクが大きい。
自由経済で独立繁栄を享受している今の韓国が、わざわざ共産中国の傘下に入る選択肢もない。

そこでどうするか? 反米の代わりにアメリカの忠実な同盟国である日本と手切れすることで、米国とは決定的な離反を避けながら、親中政策をとっているように見せかけているのだろう。

親日から反日へこれだけ急に舵を切ったのは、やはり北朝鮮情勢が危機に瀕していて、急いでいるからではないか。
いつ金正恩政権が倒れてもおかしくない状況で、最もありそうなシナリオは、北朝鮮有事の際の、中国軍による、中国人保護を口実とした北朝鮮への進駐であり、それに続く保護国化(最悪、延辺朝鮮自治区への併合)だろう。

そうすると、中国が倒れない限り、朝鮮半島北部は韓国に戻ってこないことになる。
残念ながら中国は経済も好調で政変などは当面起きそうにない。

米ロ冷戦の負の遺産
既に朝鮮半島が分断されてからすでに70年。ベルリンの壁が崩壊してから25年。
冷戦時代の分断国家だったドイツや東ヨーロッパ諸国、ベトナムなどは分断状況は解消されていて、冷戦時代の遺物が残っているのは朝鮮半島だけといってもよい。
金正恩政権が崩壊する機会を逃すと、分断状態が永遠に固定されてしまうかもしれない。今が何百年に一回の統一のチャンスである。そう考えれば、日本との関係など犠牲にしても痛くないと考えたのではないか。

韓国は中国と米国の間のこの綱渡りをなんとか成功させたいだろうが、うまく行くのか?
今は中国も日本を叩くことで得られるメリットが大きいので共同歩調を取っているように見えるが、韓国政府の腹のうちは承知の上で、その時がきたら、北朝鮮と引き換えに米軍の完全撤退と中国軍基地の北朝鮮エリアへの設置を要求して来るかもしれない。

韓国が保全したい領土
実は歴史上朝鮮の版図が一番広かったのが李氏朝鮮(中国は清朝)の時代であり、その前の新羅も高麗も、朝鮮半島のくびれの部分(平壌と元山を結んだ線、37度線のちょっと北)までしか支配できなかった。

                                 (以下、背景マップはgoogle mapより引用)

・前1世紀~2世紀の情勢


この当時が最も漢民族の勢力が朝鮮半島に伸びた時期で、後漢が楽浪郡ほか4郡を設置。
魏の時代には、まだ日本は卑弥呼の時代。

・7世紀の情勢


朝鮮民族の国家として、百済と新羅が成立し、高句麗と争う3国時代。一説には南部は大和朝廷の勢力家(任那)があったといわれる。
今中国と韓国の間で、中国の地方政権か朝鮮の国家かということで論争が起きている高句麗は、契丹、遼、金、清などと同じでツングース系(満州族と同族)の国家と考えられており、漢族でも朝鮮族でもない。

・8~9世紀の情勢

このころから満州族の国家が隆盛を極めるようになる。日本は奈良~平安時代。

・11~12世紀の情勢

モンゴル系の遼、満州族の金が東北地方を支配。

・13世紀の情勢

モンゴル帝国(元)が高麗を支配下に入れ、高麗からも日本への侵攻軍(元寇)が起こる。
日本は鎌倉時代後期。

・15世紀の情勢

李氏朝鮮が成立し、ほぼ現在の朝鮮の領域になる。
数百年ぶりに中国で漢民族の国(明)が成立。
日本は室町時代で、日明貿易が行われ、間もなく倭寇が活発化して朝鮮半島沿岸も浸食する。

・17~18世紀の情勢

中国が再び満州族の清にとって代わられる。日本は江戸時代に入り、鎖国環境下でも、長崎でオランダと主に朝鮮だけは貿易が続けられる。

・現在

19世紀末から20世紀、李氏朝鮮が倒れた後大韓帝国が短命政権として成立したが、まもなく日本に併合される。
第二次世界大戦後、ソ連軍進駐地域が北朝鮮として独立。分断状態が既に70年ちかく続いている。

朝鮮民族は、中国本土の帝国の傘下に入りながらも、したたかに国土を増やしてきたと考えらえる。
そういう意味では、李氏朝鮮の版図を引き継いだ現在の南北朝鮮の版図が対中国に対する最大エリアであり、これを守ることは重要な課題であろう。



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