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2014年1月3日金曜日

クラウドについて考える(1) プライベートクラウドという変な言葉

数年前、クラウドに関して日本の大手顧客が「パブリッククラウドではなくプライベートクラウドならば使いたい」というような話をしていて、米国人に「private cloud」と翻訳して説明したら、きょとんとされたことがある。
そもそも、クラウドは「雲のようなもの」で、つかみどころのない所有者もいないものなのだから、クラウドという言葉を使う以上は、パブリックなインフラの中で、というのが前提だったのだろう。
どうやらその後、日本のSIベンダーが「プライベートクラウド」を好んで使うのをIBM他海外の大手IT企業もまねをしだして、private cloudという言葉が米国に逆輸出されてしまったようだ。さらにはHybrid cloudなんていうさらに奇妙な言葉まで出てきてしまっている。

日本でプライベートクラウドといっていたものは、米国ではhosting serviceといわれていたもので、別にcloudという言葉を使う必要ななかったのだが、cloudが技術用語からマーケティング用語に変質するなかで、猫も杓子もクラウドになってゆく風潮の中で、buzz wordとしてSI企業が悪乗りして、cloudではないものにクラウドという名前を付けて、自社も最先端に対応しています、という宣伝を行いたかっただけであろう。

そもそもcloudという言葉を使う言葉が出てきたときに、昔からあったASP (Application service provider)やSaas (Software as a service)とどう違うのか、区別して使っていたSIベンダーの人々がほとんどいなかったような気がする。
あらためて思い出してみるとクラウドという言葉が一気に流行りだしたののは、アップルがiOSのサービスに"icloud"という本格的クラウドサービスを提供しはじめて、同時にiphoneのユーザが爆発的に広がり始めた時期に一致すると思う。
また、アプリケーションとしてもEvernoteやdropboxなどの新コンセプトのアプリが出てきたころで、従来の「ソフトはソフト」「ネットワークはネットワーク」というアプリではなく、ソフトとネットワークの境があいまいになり意識せずに使えるようになったものが流行り、これらが、正に「クラウド」アプリケーションといえるのもだったと思う。

つまり、クラウドシステム(アプリ)の「要件」としては、「クライアントアプリとネットワーク(サーバ)が自動同期することで操作性・パフォーマンスとデータの管理容易性を両立させた、新しいコンセプトのシステム/アプリ」というのが正しいと思う。
従来のシステムは、ファットクライアントとシンクライアントの形態が振り子のように流行してきた。
(80年代のホストコンピューター(シンクライアント)、90年代前半のクライアントサーバ(ファットクライアント)、90年代後半のWEBシステム(シンクライアント)、00年代前半のJava(ファット/リッチクライアント)、00年代後半のASP/JSP, ASP, Saas(シンクライアント )。
クラウドは、これらどちらとも違う、両者のいいところどりをしたハイブリッドなアーキテクチャであり、ユビキタスコンピューティングを実現する革新的な仕組みであろう。

このようなことを考えると、大半のSI企業が「プライベート」という修飾語をつけて「クラウド」といっているものは、昔ながらのホスティングシステムでしかない。
しかし、このような言葉がはやるのは、SIベンダーだけ責任あとはあながち言い切れない。というのも、「貴社の言っているクラウドとは、以前のSaasやASPとどう違うのか?」という質問をあまり聞いたことがないからだ。ユーザー企業にとっても、「セキュリティという面倒な議論を避けてクラウドという最新トレンドに対応しました」とトップに対して説明できる「プライベートクラウド」は、便利な言葉だったからだろう。


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