相変わらず日本の大企業は、クラウドシステムの導入・活用について非常に後ろ向きと感じられる。「クラウド」という言葉を出しただけで「うちには関係ありません」といわれることが非常に多い。
日本企業は、基本的に物事の「本質」を見極めるのに長けていると感じることが多いと思う。海外生まれの新しいコンセプトもうまく本質を捉え、取捨選択するかアレンジして取り込んでいる。
ただし、ことITに関しては、本質を見極める能力が海外より劣っているように思われる。
ある時はERPやSFAのように使いこなせないもののトレンドを追いかけすぎたり、ある時はWindows8のように強い拒否反応を示したり。
クラウドの導入是非に関しての議論は、後者の例である。
クラウドについて議論するとき、ユーザー企業から二言目に出てくるのは「セキュリティ」という反論である。
しかし、実際には企業からの機密情報の漏えいは人為的・意図的なものが最も多い。
また、社員に対していくらセキュリティを高めても、辞めてしまえばまったく意味をなさない。多くの日本人技術者が韓国企業に引き抜かれて先進技術をかの地に渡してしまったのは有名な話だ。
USBメモリを埋めた特殊なPCを全社員配布するよりも、就業規則を強化したり違反社員には法律的措置を持って臨むなどのほうが有効だと感じる。
クラウドについても、セキュリティ上のリスクを補って余りある利点がクラウドにはあると思う。本当にクラウドに置いてはいけないデータが、企業の中にどれくらいあるのだろうか。
図面などの技術情報も、3年5年も経てばどのみち陳腐化するし従業員の移動で社外に漏洩すると考えれば、おそらく本当の意味でクラウドに置けないデータは1%もないのではないかと思う。
だとすれば、その1%をきちんと別管理にして、残りの情報はクラウド化することで、肥大化した情報システムがスリムになりビジネスのスピードも数倍になるのではないかと思う。
このあたりの「情報セキュリティ」と「クラウド」の本質を見極めれば、もっとクラウドに対して前向きに取り組めるのではないだろうか。
クラウドに対して否定的な人たちも、プライベートでは、インターネットにクレジットカード番号やセキュリティコードを何の気なしに入れているはずである。またSNSでは撮影時刻や撮影場所データが含まれたデジカメ画像をアップしていたりする。Facebookでセキュリティ設定をきちんと行わずに個人情報がダダ漏れになってしまう人もいたりする。
本当に、社内システムのほうがクラウドよりもセキュリティ面で実際問題、危険なのかどうかを、本質的に見直してみてほしいと思う。
今年あたりから、どうやら米国ではクラウドが「やるからないか」という議論の段階から「どうやってやるか」という実施の段階に入りつつあるようである。
更に気になるのは、米国ばかりかアジア諸国の方がクラウド対応を一足飛びに進めつつあるのではないかと思われることだ。ちょうど、アジアで、電話線のインフラがなかったので一足飛びに携帯電話の導入が進んだり、imodeがなかったのでスマホが一気に流行ったのと同じであり、いつの間にかアジア諸国にも後れを取っていることにならないか、心配である。
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